管理職になって1年。振り返ると「あのとき、なぜあんなことを…」と頭を抱える場面ばかりだ。
プレイヤー時代は「仕事ができる人」として評価されていたはずなのに、管理職になった途端に何もかもうまくいかない。部下との関係、時間の使い方、評価の仕方。すべてが手探りで、正解がわからないまま毎日が過ぎていく。
「自分には管理職の適性がないのではないか」。そう思ったことがある人は、おそらく多い。
でも安心してほしい。管理職1年目で失敗しない人はいない。大事なのは、失敗のパターンを知っておくこと。パターンを知っていれば、傷が浅いうちに軌道修正できる。
この記事では、私自身が管理職1年目で実際にやらかした失敗と、そこから学んだ処方箋を7つ紹介する。どれか一つでも「あ、これ自分だ」と思うものがあれば、今日から変えられるヒントになるはずだ。
失敗1 — 全部自分でやろうとした
管理職になっても「自分がやったほうが早い」という感覚が抜けなかった。
部下に説明する時間を考えると、自分でやったほうが30分は早い。品質も確実に担保できる。だから、つい手を出してしまう。最初のうちは「自分が頑張れば回る」と思っていた。
管理もプレイングも両方の品質を維持しようとした結果、気づけば土日も仕事をしていた。平日は部下のフォローとミーティングで埋まり、自分の実務は夜と週末に持ち越す。どちらの品質も維持しているつもりだったが、実際はどちらも中途半端になっていた。部下からは「忙しそうで相談しづらい」と言われ、上司からは「チームの成果が見えない」と言われた。全部自分で抱えた結果、誰にとってもいい状態ではなかった。
これはプレイヤー時代の成功体験が足を引っ張る典型的なパターンだ。「自分の手で成果を出す」ことが評価されてきた人ほど、「人を通じて成果を出す」という管理職の役割に切り替えられない。
処方箋は「任せる技術」を身につけること。任せることは手抜きではなく、管理職の最も重要な仕事のひとつだ。詳しくは任せるのが怖い管理職が読むべき「委任の技術」で解説している。
また、プレイングマネージャーとして限界を感じているなら、プレイングマネージャーが限界を迎える前に読む処方箋を先に読んでほしい。「全部やる」からの脱却は、管理職として生き残るための最優先課題だ。
失敗2 — フィードバックを先延ばしにした
「まだ様子を見よう」。この言葉を何度自分に言い聞かせたかわからない。
部下の仕事に気になる点があっても、「もう少し待てば自分で気づくかもしれない」「今言うとモチベーションが下がるかもしれない」と理由をつけて先延ばしにした。結果、評価面談で初めて問題を指摘する羽目になった。
部下からすれば「なぜ半年間何も言わなかったのに、急に評価で低くつけるのか」という不信感しか生まれない。日常的に小さなフィードバックを重ねていれば、評価面談はその延長線上にあるものとして自然に受け止めてもらえたはずだ。
フィードバックを溜め込むと、伝えるハードルがどんどん上がる。小さな違和感が、半年後には「もう取り返しがつかない問題」に成長している。逆に、気づいたその日に伝えていれば、5分の会話で済んだかもしれない。
フィードバックの伝え方に自信がないなら、まずはSBI法(状況→行動→影響)というフレームワークを覚えるといい。フィードバックが苦手な管理職が今日から使えるSBI法で具体的な例文と使い方を紹介している。「型」があるだけで、伝えるハードルは劇的に下がる。
失敗3 — 年上部下に遠慮しすぎた
チームに自分より年上で、キャリアも長い部下がいた。正直に言えば、やりにくかった。
経験も社歴も上の人に改善を求めること自体が心理的に大きなハードルだった。「角が立つくらいなら黙っていよう」と思い、その人にだけフィードバックを避けていた。
結果、チーム内で基準がバラバラになった。他のメンバーには厳しく指摘しているのに、年上の部下には甘い。当然、不満が出る。「なぜあの人だけ許されるのか」という声がチームに広がり、全体のモチベーションが下がった。
年上部下への遠慮は、本人のためにもチームのためにもならない。大切なのは、年齢ではなく「チームの基準」を軸にコミュニケーションを取ることだ。年上部下との具体的な接し方については、年上部下との接し方に悩む管理職へで詳しく解説している。
失敗4 — 1on1を進捗確認の場にしてしまった
「で、あのタスクどうなった?」
私の1on1は、毎回この一言から始まっていた。部下の表情が曇るのはわかっていたが、他に何を話せばいいかわからなかった。結果、1on1はただの詰め会議になり、部下が本音を話してくれることはなくなった。
1on1の目的は進捗管理ではない。部下の考えや悩みを聞き、信頼関係を築く場だ。進捗確認はSlackやチームミーティングでできる。1on1でしかできないことに時間を使うべきだった。
部下が本音を話さなくなると、問題は水面下で大きくなる。退職の相談が突然やってくる。チーム内の人間関係のトラブルに気づけない。すべて、1on1が機能していなかったことのツケだった。
1on1で何を話せばいいかわからないなら、1on1で何を話せばいいかわからない管理職向け | テーマ例30選を参考にしてほしい。30のテーマ例があれば、「今日は何を話そう」と悩む時間がなくなる。また、異動直後で初回の1on1をどう進めるか不安なら、異動直後の初回1on1を成功させる準備と進め方が役立つ。
失敗5 — 指導とパワハラの線引きがわからなかった
厳しく言えばパワハラになるかもしれない。優しくすれば舐められるかもしれない。この振り子の間で、ずっと揺れていた。
特に悩んだのは、リモートワークで仕事をしていなさそうな部下への対応だった。午前中にメッセージを送っても返信は夕方。タスクの進捗も見えない。監視的になりそうな自分と、労務管理としてきちんと指摘しなければならない自分の間で揺れた。最終的に「報連相がないと労務管理に支障が出る」という制度上の根拠で伝えることにした。感情ではなく、制度。個人攻撃ではなく、仕組みの問題として話す。これが線引きの基準になった。
指導とパワハラの境界線は、実は明確だ。「行動」に焦点を当てているか、「人格」に焦点を当てているかの違い。「この報告書のこの部分を改善してほしい」は指導。「なぜこんなこともできないの」はパワハラに近づく。
この線引きに不安があるなら、パワハラと指導の境界線を読んでほしい。具体的な事例とともに、安心して指導できる基準を解説している。また、リモートワーク特有の「部下が見えない不安」については、リモートワークで部下が見えない不安を解消するで対処法を紹介している。
失敗6 — 完璧な評価・目標設定を目指した
初めての評価面談。完璧なフィードバックをしようと、何日も前から準備を始めた。部下一人ひとりの成果を細かく記録し、改善点を論理的に整理し、今後の成長プランまで考えた。
準備だけで疲弊した。
目標設定面談でも同じだった。「理想的なOKR」を作ろうとして、フレームワークの本を読み漁り、完璧な目標ツリーを設計しようとした。結果、面談の準備に膨大な時間をかけたわりに、部下の反応は「ふーん」程度だった。
最初から完璧な評価や目標設定ができる管理職はいない。大事なのは、回数を重ねて改善していくこと。1回目の評価面談が60点でも、3回目には80点になる。完璧を目指して動けなくなるより、まず「やってみる」ことのほうが何倍も価値がある。
初めての評価面談の進め方は、初めての評価面談 | 準備から当日の進め方まで完全ガイドにまとめている。また、目標設定面談の型は初めての目標設定面談 | 部下のやる気を引き出すフレームワークで解説している。完璧を目指す必要はない。「型」に沿って進めれば、最低限の品質は担保できる。
失敗7 — 管理職を「罰ゲーム」だと思い込んだ
増える業務、減らない責任、報われない感覚。「なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか」と思った時期があった。
プレイヤー時代は自分の成果が直接評価された。管理職になると、自分の頑張りは見えにくくなり、部下の失敗は自分の責任になる。給料はそこまで変わらないのに、ストレスだけが増える。これは罰ゲームではないか、と。
しかし、データを見ると違う景色が見える。パーソル総合研究所の調査によれば、管理職の73.6%は「仕事に充実感がある」と回答している。つまり、大多数の管理職は罰ゲームだとは感じていないのだ。
管理職が「罰ゲーム」になるかどうかは、構造の理解と仕組みづくりで変わる。業務を抱え込まず、フィードバックの型を持ち、1on1を機能させる。こうした仕組みがあるかないかで、管理職の体験はまったく違うものになる。
管理職が罰ゲームになる構造的な原因とその対策は、管理職は本当に「罰ゲーム」なのか?で詳しく分析している。
まとめ — 失敗は全部「仕組み」で防げる
7つの失敗を振り返って気づくことがある。すべてに共通しているのは、**「自分一人でなんとかしようとした」**ということだ。
- 自分で全部やろうとした → 委任の仕組みがなかった
- フィードバックを溜め込んだ → 伝える型がなかった
- 年上部下に遠慮した → 基準で語る習慣がなかった
- 1on1が機能しなかった → テーマ設計がなかった
- 指導の線引きがわからなかった → 判断基準がなかった
- 完璧を目指して疲弊した → 「まず60点」の発想がなかった
- 罰ゲームだと思い込んだ → 構造を理解していなかった
委任、フィードバック、1on1、評価。管理職の仕事には、すべてに「型」がある。型を知らずに我流で突き進むから、失敗する。型を身につければ、同じ状況でもまったく違う結果になる。
特に大切なのは、最初の90日間だ。この期間に基本の型を身につけ、チームとの信頼関係を築ければ、その後の管理職生活は格段に楽になる。管理職1年目のロードマップ | 最初の90日で信頼を築く方法では、90日間で何をすべきかを時系列で整理している。
もっと短い期間で集中的に動きたいなら、新任管理職の着任後30日でやるべき5つのことがコンパクトにまとまっている。
そして、型を身につけた先にあるのは「部下の成長」だ。管理職の本当のやりがいは、自分が成果を出すことではなく、部下が成長する姿を見ること。部下を育てられない管理職が見直すべき5つの習慣では、部下育成の具体的なアプローチを紹介している。
管理職1年目の失敗は、誰もが通る道だ。大事なのは、同じ失敗を繰り返さないこと。この記事で紹介した処方箋の中から、今の自分に一番刺さるものを一つ選んで、今日から試してみてほしい。
一人で悩まなくていい。具体的な状況を整理して、次の一歩を一緒に考えよう。
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