内示が出た日の「何すればいいんだ」問題
「来月からチームを任せる」
そう言われた日のことを、今でもよく覚えています。
プレイヤーとしてそれなりに成果を出してきた自負はあった。でも、マネージャーとして最初にやることがまったく分からない。ビジネス書を買い漁り、ネットで「新任マネージャー 最初にやること」と検索する日々。情報は山ほど出てくるけれど、どれも教科書的で、「で、明日から具体的に何するの?」がつかめない。
自分の場合は少し違いました。新卒4年目で昇格の打診を受けたとき、正直そこまで不安はなかった。プロダクトマネージャーとして、すでにチームを動かす「マネジメントもどき」を続けてきたからです。自分で責任感を持ってチームを育て、盛り上げてきた自負があった。むしろ「権限が増えるなら、もっと面白くなるだろう」と思ったくらいです。ただ、不安がなかったからといって準備しなくていいわけではありません。自信がある人ほど、最初の30日の過ごし方で差がつくと実感しました。
この記事では、初めて管理職になった自分が着任後30日で実際にやったことを5つに絞って共有します。「初めて管理職 やるべきこと」で検索しているあなたに、少しでもヒントになれば。
① 前任者・上司から「暗黙知」を引き継ぐ
着任前にまずやったのは、前任者と上司への「聞き込み」でした。
業務の引き継ぎ資料はもらえます。プロジェクトの進捗、予算、KPI。でも、本当に知りたいのはドキュメントに書かれていない情報の方でした。
具体的に聞いたのはこんなことです。
- チーム内の人間関係: 誰と誰の相性がいい(悪い)か
- 過去の経緯: 以前試して失敗した施策や、メンバーが嫌がる進め方
- 地雷ポイント: 「これだけは触れないほうがいい」というテーマ
- キーパーソン: チームの雰囲気を左右するメンバーは誰か
前任者には30分の面談を2回お願いしました。1回目は業務の引き継ぎ、2回目は「チームのこと」に絞って聞く。この2回目が圧倒的に価値があった。
自分の場合は新設チームだったので、前任者からの引き継ぎはありませんでした。その代わり、上司から教わって助かったのは「上への報告のトーンの使い分け」や「社内政治のいろは」。そしてもっと早く知りたかったのは、予算策定の時期やステップ、偉い人たちがどこでどんな情報を拾って意思決定しているかというレポートライン。これらはドキュメントのどこにも書いてないのに、マネージャーとして動く上で知らないと致命的な情報でした。
ポイントは、聞く姿勢を見せること。「教えてください」と素直に頼れるかどうかで、着任後の立ち上がりスピードが変わります。
② メンバー全員と1on1で「聴く」に徹する
着任して最初の1週間で、メンバー全員と30分ずつの1on1を設定しました。
ここでやりがちなのが、「自分のビジョンを語る」こと。気持ちは分かります。新しいリーダーとして、方向性を示したい。でも、着任直後の1on1は**「聴く」に徹する**のが鉄則でした。
最初の1on1で聞いたのは、この3つだけ。
- 「今の仕事で、一番やりがいを感じていることは?」 — その人が何にモチベーションを持っているかが分かる
- 「チームの中で、もっとこうなったらいいなと思うことは?」 — チームの課題が見える。複数人から同じ声が出たら、それが最優先課題
- 「自分に期待することがあれば、遠慮なく教えてほしい」 — メンバーが新しいマネージャーに何を求めているかが分かる
5〜15人のチームなら、1週間あれば全員と話せます。このとき、メモは必ず取る。後で見返すと、チームの全体像がかなりクリアに浮かび上がってきます。
自分の場合は「今後やっていきたいこと」「どんなチームにしたいか」を聞きました。もともとプロダクトマネージャーとして関わっていたメンバーがそのまま部下になった形なので、反応は歓迎ムード。大きな発見は、マネージャーになってから「指示する」のではなく「任せる」スタンスに切り替えたら、メンバーが自分から話すことを考えて準備して1on1に臨んでくれるようになったこと。任せることで、逆に主体性が引き出されたのです。
③ 最初の2週間は「変えない」と決める
新任マネージャーがやりがちな失敗、第1位。それは**「着任即改革」**です。
新しいポジションに就くと、つい「自分が変えなきゃ」と力が入る。会議体を変える、報告フォーマットを変える、承認フローを変える。悪意はない。むしろ、早く成果を出したいという真面目さゆえの行動です。
でも、チームからするとどう見えるか。
「まだ何も分かっていないのに、いきなり変えようとしている」
これは信頼を失う最速ルートでした。
最初の2週間は、現状を「理解する」期間と割り切る。既存のやり方に疑問があっても、まずは「なぜそうなっているのか」を聞く。そこには、自分が知らない合理的な理由があることが多い。
自分のケースでは「着任即改革」の失敗というより、「変えなくてよかった」と思ったことがあります。新設チームではあったものの、既存のラインを統一して維持したこと。チームの構成を安易に混ぜなかったことで、メンバーに安心感を与えられた。大きな変革は信頼の土台ができてから。最初の2週間は現状維持が正解でした。
小さな改善(会議の時間を5分短くする、議事録のフォーマットを少し整えるなど)から始めて、「この人は現場を理解してから動く人だ」という信頼貯金を積む。大きな変革は、その後でも遅くありません。
④ 自分の「マネジメント方針」を30日目に言語化して共有する
着任から約1ヶ月。メンバーとの1on1を重ね、チームの現状を理解した。ここでようやく、自分がどんなマネージャーでありたいかを言語化してチームに共有します。
方針といっても、大げさなものではありません。A4一枚、3〜5項目くらいで十分。
たとえばこんなフォーマットです。
【私のマネジメント方針】
1. 判断に迷ったら「お客さんにとってどうか」を基準にする
2. 1on1は最低月2回。キャンセルしない
3. 失敗は責めない。ただし同じ失敗を繰り返さない仕組みは一緒に考える
4. 情報はできるだけオープンにする。隠し事はしない
5. 自分も間違えるので、遠慮なくフィードバックしてほしい
大切なのは、観察期間を経てから共有すること。着任初日に語る「所信表明」と、30日間チームを見てから語る「方針共有」では、言葉の重みがまったく違います。
自分がチームに伝えたのは「基本は任せる。自由にやってほしい。でも大事なところは自分が守る」というスタンスでした。メンバーは楽しみにしてくれていたし、信頼してくれていた。ただ、正直に言うと全員にうまくいったわけではありません。自由にした結果サボってしまうメンバーも出てきて、一部にはマイクロマネジメントが必要になりました。「任せる」は万能ではなく、メンバーに合わせて使い分けることが大事だと学んだのです。
共有する場は、チームミーティングの冒頭15分を借りるくらいでちょうどいい。「この1ヶ月でみなさんと話して、こう考えました」と切り出すと、メンバーも「ちゃんと見てくれていたんだ」と感じてくれるはずです。
⑤ 30日後の振り返りで「次の90日」を設計する
最初の30日が終わったら、一度立ち止まって振り返ります。
振り返りのポイントは3つ。
- チームの現状: 1on1や日々の観察から見えた、チームの強み・課題は何か
- 自分の課題: マネージャーとして、自分が苦手だと感じたことは何か
- 次の90日の注力ポイント: 最大3つに絞る。全部を同時に解決しようとしない
30日の観察で、チームの課題は10個も20個も見つかるかもしれません。でも、最初の90日で取り組むのは最大3つ。それ以上は手が回りません。
「新任管理職 最初の1ヶ月」で終わりではなく、この30日間の学びを90日計画に落とし込む。そうすることで、着任後の「なんとなく頑張る」から「意図を持って動く」に切り替わります。
まとめ:最初の30日は「信頼の土台」を作る期間
新任マネージャーの最初の30日でやるべきことを5つ紹介しました。
- 前任者・上司から「暗黙知」を引き継ぐ
- メンバー全員と1on1で「聴く」に徹する
- 最初の2週間は「変えない」と決める
- 30日目にマネジメント方針を言語化して共有する
- 30日後の振り返りで「次の90日」を設計する
共通しているのは、最初の30日は「成果を出す期間」ではないということ。
焦る気持ちは痛いほど分かります。でも、この1ヶ月は「この人の下で働いてみよう」とメンバーに思ってもらうための信頼の土台づくりに徹する。成果を出すのは、その土台ができた30日目以降で十分です。
初めて管理職になって不安なあなたへ。大丈夫、最初は誰だって手探りです。まずは目の前のメンバーの話を聴くことから、始めてみてください。