「部下の目標設定面談、何をどう聞けばいいんだろう」
期初が近づくと、こんな不安がじわじわ湧いてきませんか。新任マネージャーにとって、目標設定面談は独特の難しさがあります。特に多いのが、次の3つの不安です。
- 何を聞けばいいかわからない — 雑談で終わりそうで怖い
- どこまで介入すべきかわからない — 口を出しすぎると「押し付け」、出さなすぎると「放置」に見える
- 部下が本当に納得しているのかわからない — 「わかりました」の一言で終わって、モヤモヤが残る
どれか一つでも当てはまったなら、この記事はきっと役に立ちます。
私自身、初めて部下の目標設定面談をしたとき、見事にやらかしました。「チームとしてはこういう方向だから、君の目標はこれがいいと思う」と、自分が考えた目標をほぼそのまま伝えてしまったんです。部下は「わかりました」と言ってくれましたが、表情はどこか納得していない様子でした。あとから振り返れば、あれは「面談」ではなく「通達」だった。目標を一緒に考えるのではなく、押し付けてしまっていたんです。
目標設定面談と評価面談は別物 — まず役割を整理する
目標設定面談に苦手意識がある人の多くは、無意識に「評価面談」と同じ感覚で臨んでいます。でも、この2つは目的がまったく違います。
| 評価面談 | 目標設定面談 | |
|---|---|---|
| タイミング | 期末 | 期初 |
| 目的 | 過去の振り返りと評価の伝達 | これからの半期を一緒に設計する |
| 上司の役割 | ジャッジする人 | 共創するパートナー |
| 部下の心理 | 「どう評価されるんだろう」 | 「何を目指せばいいんだろう」 |
評価面談の進め方についてはこちらの記事で詳しく解説していますが、目標設定面談で大切なのは「ジャッジ」ではなく「共創」です。
「この半期、あなたはどうなりたい? それを一緒に考えよう」。このスタンスを持つだけで、面談の空気はぐっと変わります。
面談前の準備:3ステップで「丸腰」を回避する
面談の質は、当日のトークスキルより事前準備で決まります。とはいえ、初めてだと何を準備すればいいかもわからないですよね。以下の3ステップだけ押さえておけば大丈夫です。
ステップ1: 組織目標を自分の言葉で噛み砕く
部長やVPから降りてきた組織目標を、そのまま部下に伝えても響きません。「売上前年比120%」という数字があるなら、「うちのチームは新規商談を月10件から12件に増やす必要がある」と、チームの日常業務に翻訳しておきましょう。
この翻訳が曖昧だと、部下は「で、私は何をすればいいんですか?」となり、面談が迷子になります。A4用紙1枚に「チームとして今期達成したいこと」を3つ書き出しておくだけで十分です。
ステップ2: 部下の現在地を棚卸しする
面談相手について、以下の3点をメモしておきます。
- スキル: 今できること、伸ばしたいと本人が言っていたこと
- 意欲: 最近のモチベーションの傾向(1on1や日常の観察から)
- 直近の成果: 前期の実績や、印象に残ったプロジェクトでの動き
5〜10分あれば書けるレベルで構いません。大事なのは「この人のことをちゃんと見ていますよ」という姿勢が面談中ににじみ出ることです。
ステップ3: 仮のゴールイメージを持つ(ただし押し付けない前提で)
「この人にはこういう方向の目標が合いそうだな」という仮説を1〜2案持っておきます。ただし、これはあくまで自分の頭の中の補助線。面談では最初に出さず、部下の話を聞いた後に「こういう方向もあると思うけど、どう?」と選択肢として提示するために使います。
面談で使えるフレームワーク:「Will-Can-Must」を新任向けに簡略化する
目標設定面談のフレームワークとして有名な「Will-Can-Must」。ただ、初めて使うと「質問が多すぎて時間が足りない」となりがちです。ここでは各ステップ2問ずつ、計6つの質問に絞った実践版を紹介します。
Will(本人がやりたいこと)を最初に聞く
Willから始めるのには理由があります。Mustから入ると「会社がやれと言っていること」が前面に出て、部下は受け身になりやすい。まず本人の意志を聞くことで、「自分の目標」という当事者意識が生まれます。
質問1: 「この半期、仕事で一番チャレンジしてみたいことって何かある?」 質問2: 「半年後、『これができるようになった』と言えたら嬉しいことは?」
部下の回答が薄いとき → 「前期で一番手応えがあった仕事って何だった? その延長線上でやってみたいことはある?」と、過去の成功体験から引き出してみてください。
Can(今できること)を確認する
質問3: 「今の業務の中で、自分が一番得意だと感じているのはどの部分?」 質問4: 「逆に、もう少し力をつけたいと思っている領域はある?」
回答が薄いとき → 「周りの人から『ここは助かる』と言われることってない?」と、他者からの評価を切り口にすると話しやすくなります。
Must(組織が求めること)をすり合わせる
質問5: 「今期、チームとして○○を達成する必要があるんだけど、その中で自分が貢献できそうな部分はどこだと思う?」 質問6: 「その貢献を具体的な目標にするなら、どんな形になりそう?」
回答が薄いとき → ステップ3で用意した仮のゴールイメージを「たとえばこんな方向もあるけど、どう思う?」と提示してみましょう。
この6つの質問を30分の面談で使うと、Will 10分・Can 8分・Must 12分くらいの配分が目安です。
面談中にやりがちな3つの失敗と対処法
失敗1: 上司が話しすぎる
これ、本当にやりがちです。「伝えなきゃ」という責任感が強い人ほど陥ります。
正直に言うと、私もこれをやりました。面談が終わったあとに会話を振り返ってみたら、自分が8割くらい話していたことに気づいたんです。「組織目標はこうで」「君にはこういう役割を期待していて」と一生懸命説明しているつもりでしたが、部下からすれば聞いているだけの30分。あの面談で部下が発した言葉は、ほとんど「はい」と「わかりました」だけだったと思います。
対処法: 「7:3ルール」を意識してみてください。面談中の発話量は、部下7割・上司3割が理想です。具体的には、自分が1文話したら相手の返答を待つ。沈黙が5秒続いても、焦って埋めない。部下が考えている時間は、面談が機能している証拠です。
失敗2: 目標を"正解"に誘導してしまう
「こういう目標がいいと思うんだけど」と先に結論を言ってしまうパターンです。部下は上司の期待に応えようとするので、「わかりました、それでいきます」と返ってきますが、本人の納得感はゼロ。結果として、期中にモチベーションが落ちます。
対処法: 正解を1つ提示するのではなく、選択肢を2〜3個並べて部下に選ばせましょう。「A案とB案があると思うんだけど、どっちが自分にしっくりくる? 他にC案があってもいいよ」。選ぶプロセスがあるだけで、納得感は大きく変わります。
失敗3: 数値化にこだわりすぎる
「目標は数値化すべき」という原則は正しいですが、すべてを無理に数字にしようとすると形骸化します。たとえば「チーム内の連携を強化する」という目標に「週3回声をかける」と数値を振っても、本質からズレますよね。
対処法: 数値目標と行動目標を使い分けましょう。売上や件数のように測定しやすいものは数値目標に。スキルアップやチームワークのように定量化しにくいものは、「○○の場面で△△ができている状態」と行動レベルで定義する。目安として、3つの目標のうち2つが数値目標、1つが行動目標くらいのバランスが実務では扱いやすいです。
面談後のフォロー:目標を「書いて終わり」にしない仕組み
面談で良い目標ができても、そのあと放置されたら意味がありません。以下の3つの仕組みを回すだけで、目標が「生きた指針」になります。
1. 合意内容を即日テキストで共有する
面談が終わったら、その日のうちに合意した目標をSlackやメールで送りましょう。「今日話した内容をまとめました。認識にズレがあれば教えてください」の一文を添えるだけでOKです。記憶が新鮮なうちにテキスト化することで、「言った・言わない」を防げます。所要時間は15分もかかりません。
2. 1on1で月1回は進捗を確認する
目標設定面談は期初の1回で終わりではありません。月1回の1on1で「目標に対して今どのあたり?」と確認するサイクルを作りましょう。1on1で何を話せばいいか迷ったときは、こちらの記事も参考にしてみてください。
3. 四半期途中での軌道修正を恐れない
期初に立てた目標が、3か月後にはズレていることは珍しくありません。事業環境が変わったり、本人の役割が広がったりするからです。そんなときは「状況が変わったから、目標を見直してみない?」とカジュアルに声をかけてみてください。目標の修正は「失敗」ではなく「適応」です。
まとめ:完璧な目標より「一緒に考えた」プロセスが納得感を作る
この記事のポイントを3つだけ振り返ります。
- 目標設定面談は「共創」の場。評価面談とは役割が違うので、ジャッジする意識は手放す
- Will → Can → Mustの順で聞く。6つの質問テンプレートをベースに、部下の言葉を引き出す
- 面談後のフォローが目標に命を吹き込む。即日テキスト共有 → 月1回の進捗確認 → 必要なら軌道修正
初めての目標設定面談が完璧にいくことは、まずありません。それで大丈夫です。大事なのは「一緒に考えた」というプロセスそのもの。部下は、目標の精度よりも「自分の話を聞いてもらえた」「一緒に考えてくれた」という体験を覚えています。
実際、私の場合は3回目くらいの面談で変化を感じました。部下が面談の前に「自分なりに考えてきました」と、目標案を持ってきてくれたんです。最初の頃は「何を目指せばいいですか?」と聞かれるばかりだったのに、自分から考えて持ってきてくれた。あのときは本当に嬉しかったですし、「ああ、面談のやり方が少しずつ良くなっているんだな」と実感しました。
回数を重ねるたびに、質問の引き出しが増え、部下の反応を読む力がつき、面談の精度は自然と上がっていきます。最初の一歩を踏み出そうとしているあなたなら、きっと大丈夫です。